Azoya

日中で近づく若者の価値観 | 中国の蓮太太さん、ファン2百万人

物質的に豊かになる中国の若者たちは、日本の商品やサービスに何を求めているのか?どんな生活を追求するようになっているのか?NNAは蓮太太さんに話を聞いた。

by NNA

中国の会員制交流サイト(SNS)でフォロワーが200万人近くに及び、最新ファッション・美容のオピニオンリーダーとして若者たちから人気の女性、蓮太太(キャンディー・リアン)さんが2017年12月に訪日した。中国向け越境電子商取引(EC)ソリューションプロバイダー、Azoya International (Hong Kong) Ltd(Azoya)の企画の下、蓮太太さんは東京の老舗百貨店、松屋銀座店で化粧品や日本の工芸品を紹介するライブ配信のイベントを初めて開催した。物質的に豊かになる中国の若者たちは、日本の商品やサービスに何を求めているのか?どんな生活を追求するようになっているのか?NNAは蓮太太さんに話を聞いた。

20171221jpn-KOL1_w.gif

松屋銀座店の化粧品販売店「ハウスオブローゼ」で洗顔剤を試す蓮太太さん=東京(NNA撮影)

Q:日本にはこれまでどれぐらい訪れていますか

訪日は7~8回目です。東京は3回ほど来ていますし、大阪、奈良、京都、神戸などもプライベートで旅行しています。歴史があって景色が美しいところがいいですね。日本の温泉も大好きで、九州の名湯に行きました。最初に来日した際、ほとんど日本語はできないのにとても親切にしてもらいました。接客が丁寧で、日本人の仕事に対する熱心さに敬服しました。その後も訪日の度に新たな発見があり、新鮮な気持ちになります。

Q:蓮太太さんは多くのフォロワーがいるインフルエンサーであり、一般的に「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれています。中国のオンラインマーケティングで注目されていますが、どんな存在でしょうか

SNSなどを通じた自分発信のセルフメディア。従来型メディアと違ってKOLの個性や魅力が大切となります。視聴者らをより良い生活スタイルへと導く役割があると考えています。上海など大都会では私のようなKOLを仕事にしている人は少なくありません。

Q:KOLになろうとしたきっかけは何でしょうか

もともとアートなど美しいものが好き。自分をきれいにできる化粧も大好きでした。化粧品を販売するオンラインの店舗を経営し、中国国内では手に入りにくい海外の商品を主に仕入れて消費者に売っていました。売る前にさまざまな化粧品を実際に試用し、体験を共有して、もっと買ってもらおうと情報発信していていたのが始まりです。少しずつフォロワーになって買ってくれる人が増え、それが蓄積していくうちにいつのまにかインフルエンサーとか、KOLとか呼ばれる存在になっていました。

蓮太太さんがライブ配信した中国のSNS「新浪微博」の画面。同日瞬間で最高40万人超が視聴した

Q:各種SNSには蓮太太さんのフォロワーが合わせて200万人近くいます。女優やタレントのようにテレビや映画などの既存メディアに出ていない一般人にこれほど膨大なフォロワーがいるのは驚きです

フォロワーの数は、中国オンライン生放送サイト「一直播」が100万人、ミニブログ「微博(ウェイボ)」が72万、写真投稿サイト「微拍」が10万人、通信アプリ「微信(ウィーチャット)」が8万などとなっています。フォロワーの約80%が女性で、20代から30代までが多いです。昔からのフォロワーは学生時代から私に注目してくれ、トータルで5~6年間、結婚して子供を産むなどして生活環境の大きな変化の中でもずっと見続けてもらっています。

Q:フォロワーの方たちは蓮太太さんの情報から何を得ようとしているのでしょうか。最新の化粧品商品でしょうか。それともファッションでしょうか。

両方ありますが、主に化粧品によるメーキャップ術かと思います。私はよく自分が使用した商品やサービスの体験をシェアしています。その中で一番アクセスがあるのは、最新の口紅商品の体験リポート。口紅の色はみなさんにとって参考になるようです。クリスマスとかイベントの日に合わせた化粧の仕方のレッスン動画もアップしています。

Q:蓮太太さん自身は最新の化粧品とかファッション、新しいトレンドの情報はどこで入手していますか

雑誌やインターネットなどとにかくいろんなチャンネルを通じて吸収しています。特に化粧品ブランドのニュースリリースには注目。日本や韓国の化粧品ブランドの新商品は発売される前に試用させていただいていることが多いのですし、発表会に参加することによっても情報を得ています。

Q:化粧ブランドの新商品を紹介するとなると、化粧品会社の広告的なコンテンツに偏ってしまう恐れもあると思います。もし商品の品質が良くなかったらどうしますか?そのままSNSで紹介するでしょうか

商品を試してみて良くなかったら、紹介すること自体を断っています。自分で本当に良いと思えるものだけを紹介することをポリシーとしています。日本や韓国の化粧品ブランドは品質を重視していますから、紹介するのをちゅうちょするような商品はほとんどありませんが、ブランドは選別をしています。例えば、私がいま紹介している仏化粧品ブランド、ディオールの商品は非常に気に入っていて、4週間にわたって肌の変化の経過写真をアップするなどして報告しています。

蓮太太さんが注目したスズ100%で作られた富山県高岡市の伝統的な鋳物工芸品「能作」=東京・松屋銀座店(NNA撮影)

Q:KOLとしての蓮太太さんの収益を得るビジネスモデルはどのようなものですか

ブランドと提携契約することによって年度の契約費とか、またあるいは商品ごと単発で契約料をもらっています。あとは、伝統的な紙媒体と似たところがありますが、ネット記事に商品の評論記事を書くことによって、原稿料をいただくこともあります。よく混同される「ネットアイドル(網紅)」と呼ばれる女性たちにも一定のフォロワーがいますが、彼女らはフォロワーや男性ファンなどから直接商品やお金などのプレゼントをもらってそれを収入源としているようです。KOLとは全く違う存在です。

Q:似ているようですが、KOLはネットアイドルとは大きく違うのですね

情報コンテンツをフォロワーとシェアすることによって、ブランドのマーケティングのお手伝いをすることがKOLの重要な仕事となっています。フォロワーはコンテンツを通じて最新ファッションなどを学ぶことができます。また日々の生活に対してプラスな姿勢を持ってもらえるような情報配信を心がけています。たまに、日々の生活の中で問題があった時に、どのように考えたらいいのかというような私なりのアドバイスもしています。

Q:中国の成長速度は速く、社会の急激な変化についていけない若者もいるのではないでしょうか

私自身はすでに30代なので、かつて中国の新人類として注目された「80年後(パーリンホウ)」なのですが、私たちの世代より若い世代「90年後(ジュウリンホウ)の仕事に対する姿勢はすでに「80後」を超えていると考えています。彼らは新鮮なアイデアを生み出す、企業にとって必要不可欠な血液のような存在となっていて、中国の古い風習や考え方を変えていく原動力になっていると感じます。独立心があって、自分の考えをしっかり持っている。彼ら若い世代に負けないよう私ももっと頑張らないといけないです。

Q:一人っ子世代は両親や祖父母から過保護に育てられていて依存心が強いというイメージがありますが、実際は違うのですね

やはり人はそれぞれの家庭環境の違いが大きく影響するので、総論としての言い方になってしまいますが、「90後」は自分なりの考えを持つ世代だと感じています。必ずしも自分の親世代と同じことをしなければならないという古い社会規範の中にはいない。一方、私などの「80後」の世代では、仕事で日々忙しい両親と一緒にいる時間よりも、甘やかせてくれる祖父母と一緒にいる時間のほうが長かった。その反省からか「90後」の親たちは子供と一緒の時間を大切する傾向があったため、教育もその前の世代と異なっていることが関係していると思います。

Q:中国でもインターネットを通じて世界のさまざまな情報が入ってくるようになっています。情報が限られていた現在の40代、50代以降の世代に比べ、若者たちは日本や韓国などと価値観を共有できるようになっているように見受けられます

本当にその通りだと思います。私の周りの40代、50代、さらに上の世代の人たちは、人生を自分の子供ないし孫世代に捧げてきました。自分自身の生活や人生を楽しむ余裕や時間がなかったように思います。日本では、銀座に来ると分かりますが、松屋などではおしゃれをしたお年寄りもショッピングやアフタヌーンティーなどを満喫しています。中国ではとても考えられない光景です。我々のような30代、20代になると、生活に余裕ができ、新しいものに関心があります。ネットのおかげで世界の人々と同じように情報を吸収できるようになっているので、中国と日本、他の国の若者たちの価値観は非常に近くなっていると思います。

Q:今回松屋銀座店でライブ配信を行いましたが、ライブ配信は中国で新たなマーケティングとして注目されているのでしょうか

ライブ配信はここ2年間ほど、中国国内で流行っています。ひと昔前はゲームのライブ放送などさまざまな生活情報が配信されることが多かったですが、現在はブランドが知名度を高める手段として多く活用されるようになってきています。今回はオンライン生放送の「一直播」を通じて松屋銀座店でのライブ配信を行いましたが、アクセスのピークは瞬間40万人が視聴し、累積で400万人超のユーザーが視聴しました。

Q:中国の若者や女性たちに発信するときにどんなことに気をつけていますか。ネットはなにかと反対意見を書き込んでくる人も少なくないはず

お堅い情報ではなく、生活に関連するソフトな情報を発信するように心がけています。彼らはそういった情報が好きです。また、実際に私も反対意見を書き込まれ、攻撃されたこともありました。しかし現在の微博などSNSは実名性になっていますので、実名登録していない人はコメントができなくなるなどの機能があります。匿名で書き込めた時代と違い、「アンチ」はかなり減っています。セルフメディアを運営するには心を広く持っていなければなりませんし、あまり気にしないようにしています。

「自分が本当に良いと思ったものしか紹介しないことが譲れないポリシー」と話す蓮太太さん=東京・松屋銀座店(NNA撮影)

Q:中国の若者たちの間で人気となっている日本商品に共通する特徴はあるでしょうか

今の中国の若い人たちは、皆が知っている高級ブランド品よりは、人と違った生き方やファッションを求めるようになってきました。知られざる良い商品やブランドというものにも注目するようになっています。例えば、今回ライブ配信で紹介した銀座松屋の商品の中では、「能作」という富山県高岡市の伝統的な鋳物工芸品で錫(スズ)100%の素材に金箔を塗った器があり、日本を象徴する工芸品として私はとても感動しました。使用する価値もありますが、家に飾って鑑賞する価値もあると思います。中国人は日本でしか売られていない商品に興味がありますので、まだ中国人には知られていない、歴史や伝統技術を持った日本の文化、商品などはこれから注目されると思います。

Q:経済的にも物質的にも豊かになっている中国の若者たちは、日本で旅行やショッピングを楽しむのが当たり前の時代になりました。現代の中国の若者や女性たちは生活に何を求めているのでしょうか

今中国の若者は生活の質を重要視するようになっています。ブランドの背景にある歴史や文化にも注目しています。ネットによって世界のさまざまな情報が手に入るようになっていますので、昔のような閉鎖的な中国とは大きく違っています。私もこのセルフメディアをずっとやっていくつもりはありませんが、できる限りは皆さんと役に立つものを共有しつつ、自分の生活も楽しんでいきたいと考えています。(聞き手=吉沢健一